三月
急に畑から野菜が消えます。
雪の下や、凍てついた畑の土の下
農家の納屋で、寒さから逃れるように
寝ていた野菜たちは、暖かさの喜びのもとで居場所を失い
季節の狭間に溶ける氷のように、静かに姿を消していきます。
そして、落ち込んでいくのが
無農薬しか扱わないやおや。
自分で決めたことなのに、毎年この時期になると挫けそう
病床のようだと感じます。
初めてのことならまだしも、
こんなことをもう六回も繰り返して
あれは奇跡の連続だったかもしれないとすら思うほど
いままでの六回は何の役にも立たず、
また初めての経験が始まります。
以前の自然食流通仕事で付き合いかあった
渥美半島の農家、無農薬だと聞いていたので、運賃など気にかけながら
電話をしてみる、深く聞くと、減農薬だという。
がっかりして、けれど相手に失礼にならないように。
電話を切る。
振り返り。
福島でがんばっている無農薬農家さんたちと
いつかまたつながれるだろうか。
数値になど出なくてもきっと世間がまだゆるさない、
なにも悪いことしていないのにね。
福島の暖かさ農家さんの熱心さにはずいぶんのこの時期助けられて
けれど二年前のあのときから、ひとりで旅に出、その後
道に迷った旅人みたいな、探し続けるこの時期を過ごしています。
きっと日々、サプライズ
また、求めていればきっと出会いもある。
無農薬野菜をお届けしつつけるというのは、実はこの時期が
一番の試練です。
低農薬なら、乗り越えられる罠。
人との約束したことはいくらでも言い訳できるけど
無農薬でやると自分で決めたから。
それが大きな企業との違い。
今の時期さびしい野菜でごめんなさい、でもついてきてください。
いいものをお届けしたい、いいものというのは形や、見た目や数ではないということ。
できたものにいろんなひとの思いがこもる。
