種を蒔くのは、満月の夜。
すべてが、しんと静まった、
誰もいない、風すらもない、
時すら、地面に留まり、
ただ月だけが、土のでこぼこを
照らしている、ただ、そんな夜に、
やがてぐるりと月が回り静かな
再びの夜、芽は土から顔をあげる
それは静かに、音も立てずに
種まきの夜より、さらに静かに
しんとした深い夜に穴を開けて、、
深遠の淵からのぞき見る。、、
さらなる、月が欠け、
また満ちて訪れる月は嵐。
芽は、静かな明るい夜を待つ。
さらに、待つ。
土からはじき打つ雨に、
揺らす風に、耐える。、
、
芽が育つ。強い雨に
土に戻る、ふたば。
風の中にも溶けそうに。、、
夏、太陽に照らされ
芽はぐんぐん、
ぐんと、伸びる。
お日さまを目指して伸びる。
夏に、どんどんさらに伸びる。、、
雨を、空に水を求め、そこになく
葉は、身を細め、ちりちりに。
徐々に枯れる葉は残りの葉に命を託す。
少しの水で生き延びる。
それはやがて来るにんじんの、赤い命を。、
夏は輝く。緑の葉の上には、
太陽がまばゆいほどに輝き、
とんぼ、かげろう、蝶、天道虫、
ガラスのように、
はかない命が空気にさざめく。、、
あげは蝶が、当てなく飛び回り
ようやく見つけたにんじんの葉っぱに、
隠すように卵をうむ。
しばらく前にうまれた幼虫が、
葉をさかんにいきいきかじる。
にんじんの葉っぱはそれでも負けない
お日さまを味方にどんどん、伸びる。、、
にんじんの根っこは、小石をよけて、右に左に
ねじれたりしながらも
人間が大気で汚した地表の雨水よりも、
透明できれいな、
さらなる水を求めて、ぐんぐん下に伸びていく。、、
土の下に、たくさんの生物
少しの栄養、ほんのわずかの
すぐになくなる、水がある。
にんじんの根は、下に落ちて沈んでいく。
水を求めて
少しずつ毎日伸びて行く。
落ちて行きながら、高く志は深く登っていく。、、
風が少し、ずつひんやりしていく、秋。
名残惜しく、過ぎて行った、夏。
静かに、空、土、すべてが祝福、
すべての命が、全霊で抱きかかえあげる
それは、いま、命の誕生。
いのちは、輝かしく己を誇る。、、
収穫！
ひとが、感謝し、そして
農家が、いのちを
抜く。にんじんは、そこで、
にんじんとして、誇らしく輝く。、、
それをうけとる。、、
あなたは、お母さん、
お母さんは、お子さんのために
お子さんが食べられる、料理を
考えて、作る。
こどものために思う。、、
あなたは、こども。
こどもは、食べる。
すべての命。
あなたはいままでを生きて
そして生きてきていない、命の長さを
食べる。
なんて、あなたのからだの
大事な、いとおしい命。、、
にんじんのなかに、抱き締めたい
命がある。
